book report.

自由気ままに読んだ本の感想を。

「ノルウェイの森」

 

ノルウェイの森

講談社

村上春樹 著

 

 たしか友達にお勧めされた本。村上春樹作品とはどんなものなのか・・・本好きなら読むべきなのか・・・様々な考えを巡らせながら、手に取った。

 

噂通り比喩が多い。村上春樹の知識量に追い付ける知識がなければ、伝わらないものも多いのではないか。と思う程だ。いや、でもわからなくても、物語の雰囲気は感じ取ることができるかもしれない。カフェでみた、名前も聞いたことのない雑誌の表紙がおしゃれだと感じるみたいに。文章にアイデンティティ性が強く、癖のある作品となっている。

 

特に、情景描写がすーーーーーーーごく細かい。

 

ゆっくりと、ひとつひとつ理解しながら読み進めると、頭の中に主人公が立つ場所、環境が肌で感じられる程に描かれる。情景を語る分、ストーリーの進行はゆっくりになる。でも、これがいい。これが好きだ。情景に没入しながら、特に意味もなく溶けていく時間の流れがこの本にはある。主人公が、ただぼーーーっと時間を溶かすシーンでは、私のリアルの時間もだいぶ過ぎ去ってしまった。

 

ストーリーが間延びするので、展開が曖昧に感じてくる。

 

現実としてはっきりしつつも、どこか靄がかかっている。

 

これが村上春樹ワールドか。と本の、勉学としてではなく、文学としての側面を、本の中でも、現実でも、多大なる時間をかけて知ることとなった。

 

本というのは、どうしても勉学的印象が強い。小説ひとつとってもそう。物語の主人公の人生を読むことで、経験を疑似体験できるものだ。また多様な日本語の語彙を読むことで知性ある発言力が養われる。起承転結が存在し、感情を揺さぶられるからこそ、心の育つものだと私は思っている。

 

しかし、ノルウェイの森は只ではすまない。非凡な本だ。

 

まず、JR中央線など、東京の情景描写があり我々が普段生きているノンフィクションな世界観に主人公がいるにも関わらず、リアリティがない。例えば、大学の寮で出会う個性の強力なキャラクターの存在。人里離れた自給自足の療養施設など、ありそうでない圧倒的なフィクションなのである。この非リアリティが、ノンフィクションの現実に、普通ではないんだよ。とガウスぼかしをかけていくのである。そんなストーリーは・・・起承転結を、疑似体験による経験を無かったものにしてしまうように感じる。こんなものは、ありえない。と。

 

これはまるで夢、不自然な現実をつなぎ合わせた夢。

 

ノルウェイの森を読み終えたときようやく目を覚ます。そして思う、これはなんだったのかと。

 

 

 

 

ノルウェイの森 上下巻セット

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  • 作者: 
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • メディア: セット買い