「夜は短し歩けよ乙女」
角川文庫
森見登美彦 著
映画化もされ、話題になっていたのでブックオフで見つけた際思わず手に取ってみた作品。些細な理由で読んだのだけど、自分の中で非常に印象が強く残っている。構成がユニークで、語彙が豊富だったからだ。理由は後述したい。
舞台は京都。雑多なのに調和のとれた表紙のイラストはこの本の特徴を正確にとらえていると、読み終わった後に気づかされた。
読み終わった後にこそ、表紙のイラストはいっそう輝いて見える。
奇想天外なファンタジーで、ストーリーはすごく複雑。非現実味も強い。なぜかというと、複数の主人公入れ替わりながら、「同じ時間軸」で、進行していく。だけど、主人公一人のストーリーを事細かに記憶していると、各主人公のストーリーの交差点がわかり、納得の連鎖が心地よい作品だった。
これ、グランドホテル方式、アンサンブルキャスト、群像劇、などというらしい。
複雑だけど、理解に苦しむ部分はなく、さらさらと読むことができた。
でも、私がこの本の一番好きな部分はグランドホテル方式ではない。
すごく、すごくすごくとてもとてもユーモアたっぷりなところだ。
こぶしに親指を隠してパンチするから、やさしさを込めたパンチになることがおともだちパンチというなんて初めて知った。クジラが海水を呑むようにお酒を飲むことを鯨飲というなんて初めて知った。読んでいく中で、すごく豊富でユーモアのある日本語遊びが形作る、輝いた世界観に引き込まれてしまう。
普段の何気ない会話にも、ユーモアたっぷりの日本語遊びができたらどんなに幸せだろうか・・・読んだらニヤニヤすること間違いなしだ。