book report.

自由気ままに読んだ本の感想を。

「ファーストラヴ」

 

「ファーストラヴ」

文藝春秋

島本理生 著

 

 本の帯にすごく魅力的なあらすじが書いてあり、どうしても読みたくて買った本。

下記に引用しておく。

 「動機はそちらで見つけてください」父親を殺した容疑で逮捕された女子大生、聖山環菜の挑発的な台詞が世間をにぎわせていた。臨床心理士の真壁由紀は、この事件を題材としたノンフィクションの執筆を依頼され、環菜やその周辺の人々との面会を重ねていくが・・・・・・。

 普段は本をブックオフで200円で買い読むことが多いのだけど、「動機はそちらで見つけてください」という衝撃的な一言に惹かれてしまった。今まで見たことがなかった。

 

内容としては引用したあらすじの通りであり、ストーリーも非常に面白いのだが、私が注目したのは、

 

この作品は人の心の秘密、仕組みに触れるような作品だったこと。

 

例えば、経験から人格、性格、感情といった要素が形成されていく。といったものだ。その経験過程に深く踏み込んだ内容となっている。そのため、読んだ後に残る感情は、心理を考えさせられるような、重たいものだった。

 

 人の表情に悩む人は少なくないと思う。なぜいつも笑顔なのか、なぜ笑わないのか、なぜ表情が顔に出やすいのか、などがあげられるが、その裏に潜む原因は必ずあるはずだ。それは、決して他人に話すことはない、絶対明かすことのない秘密。ある一例として、フィクションだが、その秘密が語られているため読み進めることで私自身もダメージを追うことになった。自分という存在が、自分の感情がどうして成り立っているのか、自分の経験がよみがえってきたからだ。だからこそ、じっくりと読めたかもしれない。前回の記事で書いた、村上春樹作品の没入感とは違う、人間と向き合う、向き合わされる没入感となっている。

 

著者自身の心のダメージも大きいのではないか。

 

そう思う程だ。でも、他人の秘密を知る、という経験や、それにより巻き起こる感情は私の心の幅を広げ、気遣いの幅を広げてくれた。

 

私の対人観念をかえるきっかけとなったことに感謝している。

 

 

【第159回 直木賞受賞作】ファーストラヴ

【第159回 直木賞受賞作】ファーストラヴ